名古屋高等裁判所金沢支部 昭和27年(ネ)180号 判決
金沢地方裁判所昭和二十五年(ヌ)第一七号強制競売申立事件につき、昭和二十七年四月三十日同庁裁判官斎藤寿の作成したる配当表中控訴人に対する配当額五千七百八十二円とあるを金二万円に、被控訴人本野仁治に対する配当額八千二百三十六円及び被控訴人金沢司税署(石川県と表示するを正当とする)に対する配当額五千九百八十二円とあるを削除することに夫々更正する。
訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の連帯負担とする。
二、事 実
控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴人石川県の指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。被控訴人本野は適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しなかつた。
当事者双方の事実上の主張及び書証の提出並に認否は原判決における摘示と同一であるからここに引用する。
三、理 由
控訴人と被控訴人本野仁治との間の訴訟については被控訴人は控訴人の主張事実を自白したものと看做すべきものである。次に控訴人と被控訴人石川県との間の訴訟については、控訴人が訴外村上鉄次との間の金沢地方裁判所昭和二十五年(ワ)第二〇九号約束手形金請求事件の執行力ある判決正本に基き、同訴外人所有の土地建物に対し強制競売の申立をなしたところ、同庁昭和二十五年(ヌ)第一七号事件として競売開始決定あり、同年十月二十三日競売申立の登記がなされ、爾来数回の競売期日を経て訴外南部彌四郎に代金十四万四千九百二十円で競落せられ、該競売代金が納付されたこと、昭和二十七年三月二十六日の配当期日に右配当裁判所が別紙第一表<省略>記載の配当表を作成したこと、同期日に右配当表記載の債権者として控訴人の代理人豊島武夫及び株式会社水村商店の代理人岩上勇次が出頭し、被控訴人本野、同石川県(金沢司税署名義を以て配当要求)及びその他の債権者が何れも出頭しなかつたことは当事者間に争なく、成立に争のない甲第一号証によれば同期日に於て控訴人の代理人が右配当表中の株式会社水村商店に対する利息債権金四万五千四百四十円は不当な高利であり、その内二万円は減額すべきである旨異議の申立を為したところ、同商店の代理人に於てこの異議を正当なりと認め、且つ右の減額した金二万円を全部控訴人に配当することについて別に異議はない旨を述べたこと、配当裁判所が右合意に従う配当表の更正並に配当の実施を為さずして配当期日を続行したことを認めることができる。而して昭和二十七年四月三十日の配当続行期日に於ける更正された配当表は別紙第二表のとおりであつて、控訴人に対する配当額は五千七百八十二円、被控訴人本野に対する配当額は八千二百三十六円、被控訴人石川県に対する配当額は五千九百八十二円と計上されていたことは当事者間に争がない。
よつて案ずるに民事訴訟法第六百三十一条に所謂他の債権者乃至関係人とは異議に関係ある債権者を指し、異議が理由ある場合に配当額を減殺せらるるに至る債権者のみを謂うのであり、同法第六百三十二条第二項の異議に関係を有する債権者とは期日に出頭しない債権者中の右と同じ立場にあるものを謂うと解するを相当とする。而して昭和二十七年三月二十六日の右配当期日には債権者中控訴人と株式会社水村商店のみが出頭し、被控訴人等其の他の債権者は出頭しなかつたこと及び減額した金二万円を控訴人に配当することについて株式会社水村商店の代理人が異議を述べなかつたことは前段の認定のとおりであり、且つ被控訴人等其の他不出頭の債権者の債権額は控訴人の前記異議により減殺さるることのないことは前段認定の配当表の記載に徴し明白であるから、該期日に於て控訴人の異議により株式会社水村商店の配当額から減額された二万円を控訴人に配当することについて、関係人の合意が成立したと認むべきものであり、配当裁判所は之に従い配当表を更正して配当を実施す可きものであつて、被控訴人等は右の更正された配当表の実施に同意したものと看做すべきである。よつて控訴人の本訴請求は爾余の争点の判断を俟つまでもなく正当として認容すべきものであり、この点原判決は失当である。
尚控訴人は本件訴状の当事者の表示中被告石川県となすべきところを被告金沢司税署と表示したりとし、当審に於てその訂正を申立てたが、地方自治法第百五十六条、昭和二十五年八月三十一日石川県条例第三十三号知事の権限に属する行政機関設置条例、同第三十九号石川県税条例に徴すれば原審説示のように金沢司税署は石川県なる地方公共団体の下部の行政機関にして、これ自体独立の人格を有せず、特別の規定のない限り当事者能力を有しないものと解されるが、控訴人において相手方として金沢司税署と表示したのは原審作成の配当表においてその表示の存したことから漫然これによつたものであり、その真意は徴税主体即ち石川県を相手方とする趣旨であつたと思われるので、右の表示はこれを誤記としてその訂正を許容するのが相当である。従つて又原審作成の配当表における債権者金沢司税署の表示も石川県とするのが正当であるが、これ亦その表示を誤つた丈のことであるからそのことでその配当表を以て無効であるとするのも該らないと解すべく、従つてその表示の誤を把えて直に石川県に対する本件訴を石川県金沢司税署に対する訴として之を却下した原判決は失当である。
よつて民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 山田市平 村上久治 伊藤寅男)